マスト細胞は化学伝達物質を放出・産生する

細胞内の顆粒から化学伝達物質を放出する

アレルギーはマスト細胞とアレルゲンとがIgE抗体を介して結合することで起きますが、それではマスト細胞とはどのような細胞なのか。

マスト細胞は皮膚や血管の周囲、粘膜周辺などに広く分布している細胞で、表面にIgE抗体と結合するためのレセプターを持つ点と、細胞内に顆粒が多数存在する点が大きな特徴です。

顆粒にはヒスタミンなどの化学伝達物質が含まれ、それらはマスト細胞の活性化にともなって細胞外に放出されます。

その仕組みは、IgE抗体と抗原との結合が引き金となって細胞が活性化し、続いて細胞の外側へ向かって移動した顆粒が細胞膜と融合して、その中身が細胞の外に放出されます。

顆粒内の化学伝達物質が放出されるこの反応のことを「脱顆粒反応」と呼びます。

マスト細胞は、顆粒内の化学伝達物質(ヒスタミンなど)を放出する他に、気管支収縮などの症状を持続させるロイコトリエンといった物質や、炎症反応を引き起こす物質(サイトカイン)も作りだします。

気管支喘息で、最初の発作が治まった後、しばらくしてから再び気管支が収縮するなどの発作が挙げられることがありますが(これを遅発型反応)、マスト細胞はこの反応にも深く関係しています。

マスト細胞が産生して、サイトカインの働きによって白血球の一種の好酸球が血管の外に呼び寄せられ、さらにその好酸球から
さまざまな物質が放出・産出されることで、炎症反応が再び起こります。

化学伝達物質が作用する仕組み

マスト細胞表面のレセプターに結合して炎症を引き起こす

マスト細胞から放出・産出された化学伝達物質が作用する仕組みは、アレルギー症状を抑える薬の働きに深く関係してきます。

ヒスタミンは、さまざまな動植物の細胞に存在する物質で、人体ではマスト細胞と好塩基球に多く蓄えられています。

その働きとしては、血管の透過性の亢進などが挙げられ、周囲の細胞に作用し炎症や平滑筋の収縮を引き起こします。

細胞に作用するとは、ヒスタミンは、周囲の細胞に備わっている炎症反応のスイッチをオンにする働きを持っています。

ヒスタミンなどの化学伝達物質が作用する細胞の表面には、それらの物質と結合するレセプター(受容体)が備わっています。

化学伝達物質をカギに例えるなら、細胞にはそれを受け入れるカギ穴=レセプターが備わっています。

そして、アレルギーの場合でいうと、活性化したマスト細胞から放出されたカギが周囲の細胞のカギ穴に入ることで、炎症反応のスイッチがオンになります。

したがってアレルギーの諸症状を抑えるには、炎症反応のスイッチを入らないように、すなわちヒスタミンをはじめとする化学伝達物質がレセプターに入らないようにすればいい、ということは容易に理解できるでしょう。

実際、アレルギーの治療にはそういった働きを備えた薬が利用されていて、アレルギー生鼻炎の薬に含まれている抗ヒスタミン薬がその代表です。

マスト細胞の働き

他の細胞に作用する物質=ケミカルメディエーター

活性化したマスト細胞から放出・産生される物質はヒスタミンがけではありません。

好酸球や好中球を局所に呼び寄せる働きを持った好酸球遊走因子、好中球遊走因子、血液凝固阻止作用をもったヘパリンといった物質もまた、ヒスタミンと同様にマスト細胞から放出されます。

さらに、脱顆粒反応によって放出されたヒスタミンはすぐに分解されてしまうので、マスト細胞はさまざまな化学伝達物質を新たに産生、ロイコトッリエンB4、ロイコトリエンD4、プロスタグランジン、トロンボキサン、血小板活性化因子といった化学伝達物質が、炎症反応を持続させるために産生されます。

これらの物質は白血球を活性化したり、血管の透過性を亢進したり、気管支の平滑筋を収縮させたりといった働きを持っていて、いずれもアレルギーの症状に深く関与しています。

炎症反応に関係して、皮下の細胞に作用する働きを持った以上のような物質を総称して、ケミカルメディエーター(chemical mediator:化学的な媒介物質という意味)と呼びます。

ケミカルメディエーターは、もともと細胞内に蓄えられているものと、刺激(マスト細胞の場合にはIgE抗体を介した抗原との結合)に反応して産生されるものとに分類され、他の細胞に作用する仕組みは、基本的にどれも同じ。

ケミカルメディエーターと細胞表面のレセプターがカギとカギ穴の関係で、結合して、さまざまな症状が現われます。

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